2015年2月6日金曜日

熊本市西区・埼陽軒・大盛ラーメン

埼陽軒・大盛ラーメン = 埼陽軒 =

 「大盛ラーメン」
  730円

 価格の満足度:★★★☆☆
 麺の満足度 :★★★★★
 スープ満足度:★★★★★
 具の満足度 :★★★★★
 総合    :★★★★★

 熊本駅は、かつて『九州一の大都会 人口五万四千あり』と明治期の鉄道唱歌にうたわれた熊本市の表玄関口だったこともあり、周辺の二本木には古い商店や旅館などが立ち並び、かつては遊郭もあった風情が残る地区でしたが、再開発でかなりのエリアの景観が変わってしまい、いずこも同じ新幹線駅前の街並みになりつつあります。

埼陽軒・外観 けれども坪井川を東に渡ればかつての雰囲気はまだ残り、この『埼陽軒』のように昭和の時代を感じさせてくれる懐かしいお店がそこここに。午前11時半近く、市電「二本木口」電停近くの橋を渡って東進すると、平日にもかかわらず数名が店外で行列しているのは、熊本ラーメン界に君臨する繁盛店の『黒亭』。横目に見ながら角を南へ曲がれば、目の前に『埼陽軒』の大きな赤いテント看板が見えていました。

埼陽軒・店内 見るからに大衆食堂然とした古びた平屋の佇まいは、繁盛の結果改装した『黒亭』とは対照的ながら、お店に入ると懐かしい温かさのオーラを放つような雰囲気が漂っています。カウンターでTVを見ていたらしい年配のオーナー男性と厨房の女性が、にこやかに「いらっしゃい!」と声をかけてくれました。行列をなす『黒亭』とは対照的に先客が誰もいません。

埼陽軒・店内と壁のメニュー 入口の正面がカウンターになっているほか、左側とその奥には小上りと座敷のテーブル席もあるようでしたが、厨房に対面したカウンター席の真ん中に陣取りました。左手の壁に貼られた“おしながき”と書かれたメニューを眺めると、麺類が中心でバリエーションはなかなか豊富なようです。『王様ラーメン』という一品は気になったものの、まずは基本メニューのラーメンを大盛で注文することにしました。それにしても手作り餃子が一皿10個で450円とは、ガッツリ食べたい系の方にはうれしいですし、「其の他トッピングは御申付下さい」とのことですから、モヤシ増量とか、チャーシュー増量とか、ゆで玉子乗せとか・・可能なのでしょうか?

 カウンター席の上には、これまた年季が入って色が変わった色紙が並んでいます。「星の王子さま」「ヘレン・ケラー」など、かなり場違い感のある文字が書かれた色紙が並んでいたので、何だろうと思えば、東京の劇団の方々が何度かの熊本公演の折に、いつもこのお店を訪問しているらしく、その演題が「星の王子さま」と「ヘレン・ケラー」だったようです。その隣には「アッと驚くタメゴロー」と書かれた、故・ハナ肇氏の色紙。1989年10月17日の日付になっていました。もう25年と少し前のものです。

埼陽軒・ハナ肇さんの色紙 “へーっ!”と感心しながら、厨房のオーナーにいつからお店をやっているのか尋ねると、昭和40年代からなので、もう40年くらいになるかなとの由。「昭和の雰囲気のままで・・」と謙遜されていましたが、こういう雰囲気は大好き。期待感も高まります。もうお一人の女性は年齢的にオーナーよりもずいぶん下で、私と同年代からもう少しお若いような感じもしました。お話好きなようで、待ち時間の間はよもやま話。

 いよいよ登場の『大盛ラーメン』。見るからに正統派の熊本ラーメンを、どうぞと出したオーナーは、「昔のままのラーメンで」と再び謙遜。昨今の味付けが濃いラーメン、コッテリを主張しすぎるラーメンには辟易としているので、この感じはうれしい!と、久しぶりに熊本のラーメンに遭遇した喜びは、スープを口に運ぶとさらに確信に変わりました。しっかり豚骨のダシを取り、まろやかさとほのかな甘味があり塩味もほどよく、背脂やコッテリは一顧だにしない、王道をゆくぜ!というスープは、極上の出来栄えで大満点の★5つでも足りないくらい。

 麺は煮えたぎる茹で鍋の木蓋の上に一度ほぐしながら並べ、蓋から滑らせるように鍋に投入するスタイルも、いかにも正統派。「気持ち硬めに」とお願いしていたので、中太ストレート系の標準的な麺は歯ごたえがあって茹で加減もほどよく、これも満足です。スープが5つ★でも足りない分も含め、麺も★5つ。

埼陽軒・カウンター上方に並ぶ色紙 トッピングのチャーシューは大きめの二枚。見た目には普通のチャーシューながら深い味わいと香りがあって、『秀ちゃんラーメン』や『大将軍』のチャーシューにもひけを取らないグレードです。その他、茹でモヤシが中央に盛られ、刻みキクラゲが施されたうえ、マー油か焦がしニンニクのいい香りもします。行列繁盛店のすぐ近くに、これほど素晴らしいラーメンがひっそり隠れていたとは!キラ星のような、熊本ラーメンの名店を一つ発見できたうれしさと満足感で、総合も文句なし★5つの満点です。

 機会を作って、次回はどうしても『王様ラーメン』を食べてみようと心に誓いながら、「また必ず来ますから」と厨房のお二人に声をかけ、ホッコリと幸せな気持ちでお店をあとにしました。派手さも個性もないけれど絶品のラーメン。つけ麺やまぜ麺、コッテリにこだわる現代ラーメン界の主流とは全く違う、何世代も前のスタイルのラーメンかもしれませんが、変わらない、否、変えてはいけない味を大切にすることの大切さを、『埼陽軒』のオーナーは40年以上実践し続けているのかもしれません。

 熊本一のラーメンと言いたくなるほど、素晴らしいお店でした。

所在地住所:熊本市西区二本木2丁目1-19
電話 番号:096-353-5609
営業 時間:11:00~23:00頃
店 休 日:月曜(ネット情報)
サ イ ト:なし